大掛かりな任務。当然必要になってくるエスパーも多く、現場はごった返していた。僕が中心となって現場を取り仕切ることになって、チルドレンたちにも指示を出しつつ、現場の他の指揮官やエスパーたちにも指示を出したり取り纏めたりで座っているのにバタバタとしていた。紫穂のサポート役として今日は現場に出ている賢木も何やかんやと紫穂とやり合いながら任務をこなしていて。粗方のスキャンが終わった紫穂から一旦の報告を受けつつ、賢木の方に目を遣ると、他のエスパー達と談笑しているのが見えた。
「よし、ありがとう、紫穂。作戦はこのままで行こう。まだ何かありそうなら無線で連絡入れてくれ」
「わかったわ、皆本さん」
にこりと笑って現場に戻っていく紫穂を、パソコンを相手にしながら見送る。二、三、賢木と喋って紫穂がその場を離れたのを確認してから、改めて賢木の様子を窺う。今日は怪我人が発生するような任務内容ではないから白衣は着ていない。カジュアルスタイルに特務のジャケットを羽織った珍しい姿。現場に赴く賢木は殆どが医者としての腕を求められているから、白衣姿じゃないことの方が稀だ。チルドレンと組んでの任務の時はもっと近い場所にいるのに、今日は大型任務な上、賢木のチームのリーダーは実質紫穂だ。僕と接する機会は普段よりグンと減る。仕方ないとは思いつつも、やはり同じ現場にいるのに殆ど会話できないというのは何だか寂しくて。任務の現場責任者としてこんなことではいけないと思いつつも、つい、目は賢木を追ってしまう。集中しなければ、とメガネのブリッジに手をやって目を瞑る。ふ、と目を開けるとこちらを見ていた賢木と目が合ってしまって。つい、手招きして賢木を呼んでしまった。
賢木は喋っていたメンバーに一声掛けて、こちらに近付いてくる。両手をポケットに突っ込んで、大勢の人だかりの間を潜り抜け、僕の元にぱたぱたと走ってくる。
その様は背の高い賢木に似合わず、まるで子犬みたいで。
「呼んだ?」
満面の笑みで僕に向かって首を傾げている賢木に胸が苦しいくらい、愛おしくなって。
ごめん、呼んだだけなんだ、と素直に白状すると、賢木は顔をくしゃっと崩して、バカ、と笑った。
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