バカじゃないの?と言われながらも髪の毛を整えてくれた紫穂ちゃんは優しい。左側、頭の天辺に纏められた髪と、どうせやるんなら、と結ばれたリボン。るんるんと歩く度にふわふわとリボンが揺れて、気分も上がる。擦れ違う職員には奇異の目で見られたけれど、そんなことは気にならないくらいにテンションが高い。皆本のいる研究室に向かってスキップでもしそうな勢いで歩いていった。
「皆本ー?いるかー?」
「どうぞー」
中から入室許可を貰って、ロックが外されたことを確認してからゆっくりと部屋に忍び込む。
「どうした?賢木」
こちらを見ずにパソコンに向かったままの皆本に、ちょっとだけ悪戯心が芽生えてそのまま皆本の背後へと足音を立てないように近付いた。そろり、と後ろから腕を回して首元に絡み付く。
「悪戯、しにきた」
ふぅ、と耳元に吐息を吹き込みながら、皆本に声をかける。一瞬身体をぴくりと震わせた皆本に、してやったりとほくそ笑む。一段と声を低くして、もう一息、呟いた。
「意地悪、されたいだろ?」
んふ、と艶っぽく笑ってみせる。傾げた首に合わせてふわり、とリボンも揺れる。すると、皆本は身体をこちらに回転させて俺を膝の上に乗せた。
「こんなことして、楽しいのかい?」
呆れた表情で俺を見上げた皆本に、あれ?失敗?と困惑する。でもそんなのは一瞬で、フッと笑って皆本は俺の頬を撫でた。
「何してくれるんだい?」
教えてくれる?とリボンに手を延ばす皆本の顔はもう、雄の顔をしていて。するり、とリボンが解かれたお蔭で真っ赤になった顔が隠れてくれた。
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