「あっちぃー……」
強い日差しに白い雲。目の前にはキラキラ光る海。管理官のプライベートビーチを日頃の頑張りというか頑張りまくってるコネでごり押しというか、で何とか貸してもらって、愛する彼女とデート、なんて訳にはいかず、チルドレンと皆本と影チルもおまけで着いてきた。というか、全員で行くなら、という条件で管理官は快諾してくれたんだけど。
皆本と一緒にパラソルを立てたりベンチを準備したり、とあいつらの為に保護者面していろいろ準備してはいるけれど、どうしたって頭の中は彼女の水着姿を妄想して下心満載だ。
「おまたせー!」
着替え終わった三人娘たちがこちらに向かって歩いてくる。嬉々として振り返ると、目的の彼女はどこからどう見ても肌色の部分が少なくて。
「荷物どこ置けば良いの?」
俺に声を掛けてきた紫穂の姿に愕然とする。
「お、おい。その格好で泳ぐのか?」
どこからどう見てもロング丈のワンピースに白いカーディガンを着ている紫穂は、海で泳ぐ格好とは程遠い。
「日除けよ、日除け。焼けたくないの」
どさり、と鞄をベンチに置いた紫穂はサングラスを外して胸元に引っ掻けた。野郎共に紫穂の水着姿を見せたくないという思いはあったものの、何も俺にまで見せてくれないというのはどうなのか。仮にも紫穂と海に行きたくていろいろ画策したのは俺だってのに!
「ってことは、泳がねぇの?」
「気が向いたら泳ぐわよ。」
「じゃあ、下は水着ってこと?」
「……エッチ」
少し頬を赤くしてそっぽを向いた彼女は今日も可愛くて。今すぐ抱き締めたいという衝動を皆の前だからと何とか我慢する。
「私、ちょっと日陰で休むわ。暑すぎて嫌になっちゃう」
「俺、ついてようか?」
「先生は海で遊んできていいわよ。楽しみにしてたんでしょ」
うん。君と海できゃっきゃウフフするのを楽しみにしてた。パラソルの下のベンチに座った紫穂にバレないように溜め息を吐いて、膨らませてあったビーチボールを抱える。
「日陰なんだから羽織は脱いどけよ。熱が籠って熱中症になるぞ」
「わかったわ。じゃあいってらっしゃい」
いつも通りツレない彼女に手を振られて海に向かって歩き出す。後ろをチラリと振り返ると、俺に言われた通りカーディガンは脱いだ紫穂の姿が確認できてひと安心する。しゅっと伸びた白い腕が日に弱そうなのを強調していて。仕方ねぇか、と海に向かって走り出した。
暫く皆と遊んで、紫穂の様子が気になるから、と海から上がる。背中にいろんな冷やかしが飛んでくるのを全部無視してパラソルに駆け寄ると、寝てしまっている紫穂を見つけて。慌てて声を掛けながらクーラーボックスのスポーツドリンクを取り出して紫穂に差し出す。受け取る様子もなく、起きる様子もない紫穂をスキャンして体調を確認すると、どうやら熱中症にはなっていないらしい。冷たく冷えたペットボトルを首元に当ててやると、ビックリしたのか跳ね起きた。
「冷たいじゃない!何するのよ!」
「いや、このまま寝てたら熱中症なるからな?無理矢理起こしたんだよ」
ペットボトルを渡しながら紫穂に水分補給を命令する。白い喉を上下させながらスポーツドリンクを三分の一ほど飲み干した紫穂は、ふぅ、と息を吐いて暑いと呟いた。
「そんなに暑いならさ、ワンピース脱いで水着になればいいんじゃね?」
ここにいるなら日陰だし焼けねぇよ?と続けると、ぷい、と紫穂は顔を背けた。
「誰かさんがいやらしい目で見てるからヤダ」
「……当たり前だろ。彼女の水着姿が嬉しくない野郎が居るもんか」
所詮俺もただの男ですよ、とぼやきながら隣のベンチに寝転ぶと、紫穂は体育座りで身体を小さくしながら呟いた。
「……最近、ちょっと太ったから、水着になるの、恥ずかしいのよ」
ほんのりと頬を染めて自分の爪先を見ている紫穂は今すぐどこか二人になれる場所にフケて可愛がってやりたいくらいに殺人級に愛らしい。そんなことはできないとわかっているので妄想だけで済ませて、ふっと笑った。
「どこが太ったんだよ。気のせいだろ。何ならフルスキャンしてやろうか?」
にやり、と悪戯を仕掛ける笑顔で手を翳してやると、紫穂は身体を守るように抱き締めながら首を横に振った。
「わかった!わかったわよ、脱げばいいんでしょ?」
渋々、といった様子で紫穂はごそごそとワンピースを脱いだ。現れた水着は新調した物らしく、俺が見たことないものだった。じっと見ている俺の視線から逃れるようにサッとカーディガンを羽織ってしまう。一瞬しか見ることが出来なかったその白い肌にがっかりしながらも、たわわに実った二つの果実に目が釘付けになる。
「太ったっていうか……また大きくなった?」
指摘すると、キッと涙目で睨みつけられて。
「誰のせいだと思ってるのよ!」
「俺のせいですね、スミマセン」
そんな顔をしていても、可愛いだけだぞ。と思ったことは心に閉まって、紫穂の肩を抱き寄せて頬にキスを落とした。
「水着、似合ってる」
耳元で囁いてやると、バカじゃないの、と言って紫穂は顔を赤くした。
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