彼が最も欲しいのは甘くて苦い彼女からのプレゼント - 2/5

「ま、レシピはこんなところじゃないか?」
「ありがとうございますトレイ先輩!」
「気にするな。でもま、お前も大変だな? 下手したら全校生徒だろ? 材料費だけでもバカにならない……」
「それは……学園長に相談したら、なぜか先生たちにも贈り物をするという話になっていて……先生たちからもカンパを頂くことになりまして……」
「そりゃすごいな。まぁ、キャラメルのコーティングチョコもアイスボックスクッキーもそんなに難しい物じゃないから。量産が厳しそうだったらハーツラビュルで手伝ってやるし」
「はい……ありがとうございます……」
「構わないさ。俺たちが一番にお前が作ったチョコレートとクッキーにありつける特権と引き換えだとしたら、リドルだって手伝ってくれると思うぞ?」

ニヤリと笑うトレイ先輩に、あはは、と空元気で笑顔を返す。
でも本当に、全校生徒分、となるとトレイ先輩に手伝ってもらった方が得策かもしれない。トレイ先輩もケイト先輩も、リドル先輩だっていつもお世話になっている先輩方だし、デュースやエースにもマブとして、これまで助けてくれたお礼として先に渡したいメンバーでもある。作ったついでに渡してしまえばラッピングの手間が省けていい、なんて言うとリドル先輩に怒られてしまうかもしれないけれど。でもこっちは全校生徒が相手なのだ、その日ばかりは女王様にも治外法権をお願いしたい。

「それにしても……キャラメルとクッキーか……マカロンのレシピは必要ないのか?」
「えっ!?」
「え……これってそういう意味じゃないのか?」
「え、えっと」

なんだ違うのか? と意地悪く笑っているトレイ先輩は明らかに私を冷やかしてる様子で、バレてしまった以上、ソウデスネ、と片言で返すしかなかった。
この世界でもお菓子たちに込められた意味が同じ意味を持っているのだとわかってしまったら、ますますマカロンなんて贈れない。そもそも誰に何を贈るかすら伝えていないのに、マカロンを贈りたい相手までバレてしまっているようでとても気まずい。

「マ、マカロンはいいんです。そもそも私の腕じゃ作れないと思いますし……」
「マカロンくらい手伝ってやってもいいが……まぁこういうのは自分で作ることに意味があるしな」

ニッと口角の片側だけを持ち上げて目を細めた先輩の視線から逃れるように目を逸らすと、ちょっとイジメすぎたな、と頭をポンポンされて思わずレシピのメモで顔を隠した。

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