「わ!スゴイ!スイートってこんな部屋なんや!」
モナコ公国での任務を終えて、案内されたホテルの部屋に着くと、その部屋の素晴らしさに葵は声を上げた。バレットはそんな葵の様子を見て、柔らかい表情で笑っている。
「窓から海も見えるし、向こうに街並みも見えるし!風景まで最高やん!」
駆け寄ったベランダから見える景色にきゃっきゃと声を上げながら後ろを振り向くと、自分を見つめながら静かに笑うバレットと目が合って。子どもっぽくはしゃいでしまったことが急に恥ずかしくなって、ふい、と外の風景に視線を戻した。
「……でも、ホンマ綺麗……こんなんやったら、チルドレン皆で任務やったら良かったのに……」
薫と紫穂もここにいれば、一緒にはしゃいで、思い出にすることができたのに、と心の中で思っていると、ふ、と隣に影ができた。
「……俺と一緒じゃ、不満でしたか?」
隣に立ったバレットが、そっと葵の肩を抱いた。ふわりと風が吹いて、葵の髪を靡かせる。それをバレットは優しい手付きで整えて、また穏やかに笑ってみせた。葵はバレットの甘い雰囲気にドキドキしながら、目を逸らす。
「……そないなこと、言うてへん、やろ」
バレットの雰囲気に呑まれそうになりながらも何とか答えると、ふ、とバレットは口許を緩めて葵に囁いた。
「キス、してもいいですか?」
バレットも、旅先で浮ついているんだろうか。いつもならキスを求めないシーンなのに、どうして。小さく頷いて、ゆっくりと目を閉じると、少しだけ間を置いて、ちゅ、とバレットが葵にキスを落とした。いつも通りのキスに、ほっとしながらも、葵は考えないようにしていた夜の事を思い出してしまって、身体に緊張が走る。
「……葵どの?」
バレットは不思議そうに葵の顔を覗きこんで、少しだけ心配するように表情を歪めた。葵はぱっと顔を背けてバレットの身体を押し返す。
「な、何でもないから……ご飯、行こか」
「……そうですね。日が暮れる前に、行きましょう」
バレットは様子のおかしい葵に疑問を感じながらも、葵の勧め通り、食事に出掛けることにした。荷物から貴重品だけを抜き取り、葵の手を取る。
「皆本さんから、美味しいレストランの場所を聞いてきました。そこでもいいですか?」
なんだかんだとそつなくそういったことをこなして、バレットは葵をドギマギさせる。葵の前では、オタクでカッコ悪いバレットなんて居ないのだ。いつも、カッコ良くて、キラキラとして、葵をときめかせてくれる。
「うん……そこでエエよ……」
そんなバレットと、自分は今夜、ついに。そこまで考えて頭が爆発しそうになった葵は、ぶんぶんと首を振って思考を何とか外へと押し遣る。冷静に、冷静に、と呟いている姿を、バレットは不思議そうに見つめていた。
「美味しかった!流石皆本ハンのオススメや!」
「そうですね。量も申し分なかったです」
ホテルに着いてから、それぞれレストランの感想を言い合う。持ってきたままだった荷物の荷解きをしながら、バレットはふと、葵に向かって何の気なしに告げた。
「葵どの、よければ先に風呂、使ってください」
「へぇッ?!」
「……?何か問題ありますか?」
「えっ、やッ、ううん!?違うねん!!!」
紫穂の言っていた通りの展開になってしまって焦っているなんて、口が裂けても葵は言い出せなかった。女性を先に風呂へ入らせて、男はその間にいろいろと準備する、らしい。まさか本当に聞いていた通りになるとは思っておらず、急に葵の身体に緊張感が走る。
「……まだ、風呂には早いですか?」
「ちゃ、ちゃうねん!ほなら、ウチ、先にお風呂いただこうかな!?」
ばたばたと荷解きした荷物からお風呂セットを取り出して、葵はわたわたとバスルームへと向かった。
「ごゆっくりどうぞ。俺は皆本主任に報告などを済ませておきますので」
ニコリ、と笑うバレットに、ドキンと心臓が跳ねる。わかった、ともたつく口で答えながら葵はバスルームへと飛び込んだ。ガラス張りのバスルームの洗面台に、薫から借りた良い香りのするヘアオイルと、紫穂から借りたとっておきの香水を並べる。
「……女は度胸や!葵!」
バスタブの中にはお気に入りの入浴剤を入れて、いつも以上に気を遣いながら身体を磨いていく。初めてだからこそ、バレットにがっかりされたくない。身体中すみずみまでピカピカにして、ホテルに備え付けられていたローションを塗っていく。ふわふわのバスローブを身に纏って、鏡の前に立つ。薫や紫穂に比べて、貧相な自分の身体。それでも、少しでもバレットに満足してほしくて。香り付け程度にヘアオイルと香水を馴染ませて、そっとバスルームの扉を開けた。
「……早かったですね……ッ、葵どの!その恰好!?」
「え?何か変……?」
「いえ……すみません。自分も入ってきます。葵どのは奥の寝室を使ってください」
では、と葵の姿を視界から消すようにバレットは顔を逸らした。そのまま足早にバスルームへと向かったバレットを、葵は不思議そうに見送った。ぱたり、と扉の音が響いて、葵はふと部屋の中を見渡した。奥へと続く扉の向こうにバレットが言っていた寝室が備えられている。だが、ここはスイートルームなのもあってか、リビングの向こう側にある仕切りの向こうにも、豪勢なベッドが用意されている。仕切りからそろりと顔を覗かせると、整えられた大きなベッドが目に入った。葵はそのリネンの白さにどぎまぎして顔を引っ込める。バレットはもう、紫穂の言っていた準備とやらを整えたのだろうか?葵を風呂へ向かわせたということはそういうつもりなのだろうから、きっともう準備万端のはずだ。あとはバレットが風呂から上がってくるのを待つだけ。葵はきゅっと胸の前で手を握り締めた。
「あっ、葵どのっ?!寝室に向かわれたのではッ?!」
裏返ったバレットの声に葵はハッと振り向いた。そこには自分と同じバスローブを身に付けたバレットが顔を赤くして立っている。葵は緊張で膝が震えそうだったが、応援してくれた二人の為にも、勇気を振り絞ってバレットに近寄った。
「バレット……今まで、我慢させてもうて、ゴメンな?」
はらり、とバスローブを床へ落とす。葵は紫穂の演技指導通り、精一杯のしなを作って続けた。
「ウチのハジメテ、貰うてくれる?」
現れたのは葵の一糸纏わぬ裸体。目の前にいっぱいに広がる肌色に、バレットはゴクリと喉を鳴らして身体を硬直させた。バレットの胸板にそっと手を伸ばし、葵は、つつ、と指を這わせる。
「あッ、葵どのッ?!」
ひっくり返った声で叫んだバレットは、目を瞑ってべりりと葵を引き剥がす。
「こういうことはッ!もっと順序を踏んでからッ!」
顔を真っ赤にして叫ぶバレットは、葵の肩に触れた手すらも赤くして必死に抵抗している。バレットのその様子に、葵ははっとしてバレットを見上げる。バレットにはそのつもりがなかったのだろうか。自分が先走っただけで、バレットは折角のこの機会だというのに、別々に夜を過ごすつもりだったのだろうか。急に不安になってきた葵は、少し俯き加減でバレットに問う。
「バレットは……ウチと、そういうこと、するんは、イヤ?」
震える声で、葵は小さく問いかけた。バレットは、その葵の姿に男の本能のようなものが身体中駆け巡るのを感じて、ぎゅっと葵の身体を抱き締めた。
「……そんなことありません。葵どのにそこまで言わせてしまう俺は情けないですね」
バレットの切ない声に葵はきゅんと身体が疼くのを感じた。そのまま、自分と同じ石鹸の匂いがするバレットの胸板に顔を埋める。バレットは、そっと葵の身体を離してから額にキスをして、優しく頬を撫でた。
「先にベッドへ行っていてください」
すぐに行きますから、とバレットはリビングの方へ消えていった。葵はのろのろと足を動かしてベッドに乗り上げる。さらりとしたリネンの感触が冷たくて心地よい。これから始まる展開にドキドキしていると、ぎし、とベッドが鳴った。
「葵どの」
バレットの声に振り返ると、葵の目に、紫穂と薫に散々見せ付けられた四角いパッケージが目に入った。バレットはそれをベッドサイドに置くと、そっと葵に身体を近付ける。
「バレット……」
震えそうになる手を握り締めて、バレットに身体を向ける。あんなにも練習したのに、いざとなると緊張して声が出ない。すぅはぁ、と深く呼吸をして、葵は覚悟を決めた。
「バレット……ウチで、気持ちよぅなって?」
バレットは葵の言葉にドキリとして身体を強ばらせた。その隙に、葵はバレットのバスローブに手を掛けて、バレットの鍛えられた身体を顕にする。そのままバレットの胸板の筋肉を辿るように指を這わせて、優しく鎖骨にキスをした。紫穂に教わった通り、ソフトタッチを意識して、ゆっくり、ゆっくりと下半身に指を這わせていく。
「あッ……葵どのッ……それ以上はッ」
呼吸を荒げたバレットがその先へと進もうとする葵の手を掴む。葵はその手の熱さにドキリと心臓を高鳴らせながらも、何とか笑みを作ってバレットを見つめる。
「気持ちいい?バレット……」
薫に教わった通り、上目遣いで、舌をちろりと見せながら、葵はバレットに口付ける。バレットは葵に翻弄されるがまま、キスを受け入れて口を開いた。葵の舌がぬるりと入ってくるのにバレットは頭がくらくらしそうだった。そっと優しく葵の肩を撫でて、バレットは葵の舌を味わう。キスに夢中になっていると、葵の手がゆっくりと下へ降りていって、バレットの下着に指が掛かった。慌てる間も与えられずに、するりと下着を下ろされてしまう。ぶるりと飛び出て外気に曝された自分のモノに、バレットは思わず葵を引き剥がした。
「ちょっと待って!葵どのッ!どこでそんなのッ!」
覚えてきたんですかと続ける前に、ニッと大人びた表情で葵が笑った。そのままバレットの下着を完全に取り去って、垂れる髪を耳に掛け、ゆっくりと下半身に顔を近付けた。
「あ、葵どのッ?!」
ちゅ、と先端にキスをされてバレットは情けなくも身体を震わせた。葵は嬉しそうに笑って、バレットのいきり立つソレに手を沿え、ゆっくりと口に含む。
「うッ……ちょ、葵どのッ……待って!」
葵はバレットの様子など気にする様子もなく、ゆるゆると竿に舌を這わせている。時々吸い付いて、指で撫で上げて、絶妙なバランスで愛撫をしてきて。バレットは快感の渦に飲み込まれそうになるのを何とか耐えながら葵を引き剥がそうと肩を掴んだ。葵は止める様子も見せず、バレットのモノを口に含んできゅっと吸い上げている。
「あッ、葵どのッ、ホント、止めてッ」
バレットは何とか力を入れて、葵を傷付けない程度の力を出して、無理矢理自分から引き剥がした。濡れた局部が空気に曝されてひんやりとした感覚が走り、少しだけ冷静さを取り戻す。はぁはぁと肩で息をしながら、バレットは葵を睨み付けた。
「葵どの!一体どこでそんなことを覚えてきたんです?!」
「……気持ちよぅなかった?」
「気持ち、良かったですけど!そういうことではなく!!!」
不安そうに見上げてくる葵に怯みながらも何とかバレットは強い口調で叫んだ。初めてにしては手慣れすぎているのではないか。一抹の不安がバレットの頭を駆け巡る。葵は確かに初めてだと言っていたが、それにしては積極的すぎやしないか。自分はまだ愛しい彼女に触れてもいないというのに。バレットが強い目で葵を見つめていると、葵は閃いたように目を輝かせ、ベッドサイドに手を伸ばした。バレットが不思議そうに葵の行動を見ていると、葵はゴムを手に取り、パッケージを裂いた。
「なんや、入れたかったんやったら、そう言うてぇな。ウチ、初めてやから、わからんくて」
ゴメンな、と葵が言う間にスルスルとゴムが装着される。バレットはあまりの展開の早さについていけず、目を白黒させていると、葵がそっと肩に手を載せてバレットに跨がった。
「ウチ、初めてやけど、頑張るさかい。気持ちよぅなって?」
バレットは不安げに微笑む葵に気を取られてしまった。止めなければならないのに、葵が唐突にバレットを飲み込もうと重心を沈め始めるのを許してしまった。
「くッ……はぁッ……」
「あっ、葵どのッ?!」
「大丈夫、やからッ……」
どこが大丈夫なんだと言いたくなるぐらい、葵は苦しそうに眉をしかめている。無理に腰を進めようとする葵を何とか力ずくでバレットは止めようとするが、自分の上に跨がられている状態では上手く抵抗できず、半分葵のされるがままになっている。それでも何とか葵の行動を止めようと葵の身体を抱き止めた。
「止めてください葵どのッ!無理をすれば貴女が傷付いてしまう!」
バレットだって全くの無知ではない。このまま続ければ葵が痛い目を見るのはわかりきったことだった。そもそもこんな独りよがりの行為がしたいわけじゃない。こういったことは二人の気持ちが伴って、二人で進めることのはずで、こんな風に気持ちよさだけを求めて進めるのは何処か違和感がある。バレットはどうすれば葵を止められるのか必死になって考えていた。ただ、葵らしい性格の、真っ直ぐ真面目に、自分を気持ちよくさせようとしてくれているのは伝わっていて、そこを傷付けずに上手く葵を誘導する自信が、バレットにはなかった。
「大丈夫や……ちょっとだけ、我慢したら、何とかなるはずやから」
葵はバレットに腕を絡めながら、苦しげに呟いた。浅く呼吸を繰り返して、何とか身体の力を抜こうとしている葵を抱き締めながら、バレットは葵の言葉に、スッと何かが自分の中で醒めるのを感じた。
「葵どの……もう、止めましょう」
バレットは、葵の背中を撫でながら、そっと優しく呟いた。我慢して何とかする、なんて、自分の望む行為とは掛け離れている。ここで、やっと初めて触れることのできた葵の肌のきめ細やかさに、バレットは感動していた。するり、と肌の感触を味わうようにバレットは葵の背骨を指で撫で上げていく。葵はそれにふるりと身体を震わせながらも、イヤイヤと首を振った。
「ッ!イヤやッ!ちゃんとできるからっ!ウチはッ」
「葵どの」
葵の目尻に浮かぶ涙を親指で拭いながら、バレットは安心させるように葵の頬を包み込む。葵は表情を強張らせて、バレットを見つめた。
「今日はもう、止めておきましょう」
バレットはもう一度、葵に言い聞かせるようにと続けると、葵は表情を固くしたまま、はらはらと泣き出してしまった。
「う、ウチは、バレットに、気持ちよぉなって欲しくて、だから、ウチはッ」
「……俺一人、気持ちよくなっても意味がありません。葵どのの無理をおして、先に進めても、俺は嬉しくない」
泣きじゃくる葵の頬に優しく口付けながら、バレットはそっと葵を抱きしめた。その柔らかさにほんの少し驚きながらも、ぎゅう、と柔らかい身体を労るように抱いて、次々と涙が溢れてくる目尻にキスをする。
「俺、葵どのがちゃんと気持ちよくなれるように、勉強しますから。今回は、俺の力量が足らず、申し訳ありません」
愛しい人を泣かせてしまった不甲斐なさに、バレットは苦虫を噛んだような心持ちだった。こんなことになるんだったら、こうなる前に、ちゃんと知識を身に付けて、愛しい彼女を誘導できるようにしておくべきだった。泣いている葵の呼吸を整えるように背中を撫でながら、ゆっくりと葵の手を引いて、二人で大きく柔らかいベッドに身を横たえる。
「今日は、こうして、二人で寝ましょう。それだけでも充分、俺は幸せだから」
バレットは優しく葵の頭を撫でながら、葵の腰を抱き寄せた。緩く、力を入れて。離さないとでもいうように。
「バレット……ゴメン、ウチ……ゴメンな」
「葵どのが謝ることじゃありません。二人で、ちゃんと、勉強しましょう」
「バレット……うぇッ、ゴメ、ゴメンな、バレットっ」
バレットの胸に顔を埋めて、葵はしゃくり上げて泣き出してしまった。それを優しく慰めるように葵の背中をポンポンとしながら、バレットは葵の髪に顔を埋める。胸一杯に葵の香りを吸い込んた。バレットは一生懸命自分のためにしてくれたことを思って、胸が苦しくなった。バレットは少しでも葵が辛くないように、葵の額に口付けを落とし、溢れる涙を拭ってやる。キラキラと涙に濡れている葵はとても美しかった。でも、今の自分には、彼女の全てに触れる資格はきっとない。バレットはその現状に心を痛めながらも、腕の中にいる、護るべき愛しい葵のことを思った。
「バレット……好き、やで」
ぽつり、と呟いた葵に、バレットは柔らかく微笑む。
「俺も……愛しています」
葵の目尻に口付けながら、バレットは大切な言葉を口にするように葵の耳元に囁いた。まだ少し涙が残っていた葵はふるりと身体を震わせて、きゅうとバレットに抱き付く。バレットも同じように葵を抱きしめて気持ちを込めるように額にキスをする。泣き疲れてうとうとし始めていた葵は身体が暖まってきたのもあってか、すーっと意識を失うように眠ってしまった。その穏やかな寝顔を見つめながら、バレットは静かに溜め息を吐いた。
葵と、そういうことになりたいと、考えていなかった訳ではない。ただ、まだまだ未熟な自分が責任を伴うような関係を持ってしまうということが、正直な話、怖かった。今思えば、それは逃げで、愛しい彼女と真正面から向き合うことを避けていたことになるのかもしれない。バレットは眠る葵の髪を一筋掬ってぱらぱらとベッドに溢した。ふわりと漂う、いつもと違う甘い香りにくらりとする。そんな自分に、葵は不安を抱いていたのだろうか。その不安が、今回のような行動を起こさせたのだろうか。護るべき存在を不安にさせて、自分は一体どこまで不甲斐ないんだろう。バレットは葵を起こさないように、そっと頬を撫でた。睫毛はまだ涙で濡れている。優しく指で拭ってやって、ぎゅっと握りこぶしを作った。
この状況を打開するには、自分が変わるしかない。バレットは強くそう思った。でも、変わるにはどうすればいいのか。そこまで考えて、ふと、力強い味方がいることに気付いた。確かに、あの人なら今の状況を打開する何かを授けてくれるかもしれない。バレットは、脳裏に浮かんだ男の姿を心強く感じながら、帰国したらすぐに相談しに行くことに決めた。
こういうことを相談するのは勇気がいる。勇気どころか恥も捨てなければならない。でも、とバレットは考える。あの人は恐らく笑わずに、真剣に向き合ってくれるだろう。ふざけた面も多いが、根は仲間思いで情に厚いことをバレットは知っている。それに、ほぼ捨て身で挑んできた愛しい彼女のことを考えれば、バレット自身の恥などあってないようなものだ。穏やかに眠る葵をもう一度ぎゅっと抱きしめて、バレットはぎゅっと目を閉じた。
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