「どうした? 皆揃って」
何かあったのか? と首を傾げながら椅子ごと振り返ると、こそこそとした様子の薫ちゃんと葵ちゃんと悠理ちゃんが、もう一度外の様子を窺いながら俺の研究室に入ってきた。
「……ってか、あれ? 紫穂は?」
いつもならこのメンバーに含まれているはずの紫穂の姿が見当たらない。その指摘に、薫ちゃんと葵ちゃんが俺にじとりとした目を向ける。
「今日は一緒じゃないよ。っていうか紫穂がいないとここに来ちゃダメなワケ?」
「いや、そんなことねぇけど……」
「紫穂を巻いてくるのめっちゃ苦労したんやから! そんなガッカリした顔されたらこっちがツラなるわ!」
そんな顔してるのか、と思わず頬に手を遣ると、申し訳なさそうな顔をした悠理ちゃんが顔の前で両の指を絡めるように交差させ、おずおずと上目遣いに話し掛けてきた。
「あの……実は、紫穂ちゃんの誕生日のことで、相談があって来たんです」
悠理ちゃんの言葉にそうだそうだと二人が後ろで頷いている。紫穂の誕生日? と改めて首を傾げると、三人がいかにも女子高生らしく口々に喋り始めた。
「ウチらもう大概のもんプレゼントしてしもてて、ちょっとマンネリやねん」
「まぁなぁ。付き合い長いとそうなるよな」
「でしょー? でね、ちょっと今年はサプライズしようと思ってて……」
「へぇ……で? 俺は何をすればいいんだ?」
「流石先生っ! 話が早くて助かる!」
俺の問い掛けにピョンと飛び跳ねて喜びを表現した薫ちゃんは、ウキウキした表情でパチリと手を叩いた。
「賢木先生は協力してくださるだけで充分です。あとは私たちで何とかしますから」
「は?」
「だから、何も考えずに私だけを見てください」
「え、なに? 悠理ちゃん」
「大丈夫……すぐに気持ち良くなれますから」
「えー……」
と言いながらも急激に襲ってくる眠気。抗えないような波のようなものが押し寄せてきてゆっくりと目を閉じてしまう。強力な催眠を掛けられたんだと気付いた時にはもう意識を失っていた。
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