「なによ…バカ…」
もう何度も読み返した手紙を再び読み返す。
少し、クタクタになりつつある封筒と便箋をそっと胸に抱えた。
潮風が気持ちいい。
熱をもった目許を冷ましてくれる。
強い風が私の髪を煽って。
明日、私たちも此処を発つ。
松風くんが予測した、ウィザードの出現場所。
かなり精度の高い予測だから、恐らく直撃することになると思う。
いよいよ、と皆の士気が高まっていた。
ふぅ、と息を吐いて、空を見上げて。
「…きれい」
澄みわたった空に、ゆったりと雲が流れている。
先生のいるところも、同じ雲が流れてる?できればどうか、先生は後方支援で、直接戦うなんてことにならないといいな、と思う。
胸元の便箋を額に当てて、思念を透視み取った。
「…ホント、バカなんだから」
伝わってくるのは、深すぎる愛情と、私への心配ばかり。
ちょっとは自分の心配しなさいよ。
今回もどうせ死亡フラグ立てるに決まってるんだから。
便箋の折り目を変えないように、丁寧に畳み直して封筒にしまう。
もう一度、封筒を胸元に抱え込む。
物には思いが宿るって言うけれど、物を透視み取れない人たちでもそう言うってことは、私たちサイコメトラーにとって、その言葉の意味はもっと重いもの。
一緒に入っていた四ツ葉のクローバーの栞は、先生が使っていたもので。
「こんなの、逆に捨てられないじゃない。」
誰かが拾って呪われたら大変だわ、と四ツ葉のクローバーにキスをして。
先生も、どうか無事でいて。
荒っぽい海の風に、願いを放った。
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