お風呂借りるね、と慣れた様子で紫穂ちゃんが風呂へ向かってから三十分。もうそろそろ出てくるだろうと冷蔵庫から新しい水のペットボトルを取り出していると、カチャリとバスルームの扉が開いた。
「お風呂アリガトー」
「おう……って、また! それ俺のTシャツ!」
風呂上がりの着替え用として脱衣場に置いているTシャツ一枚だけを身に付けた紫穂ちゃんは、俺なんて気にも止めずペットボトルの封を開けてコクコクと水を飲んでいる。
開いた首元から覗く白い肩や見せつけるように曝された細い喉に目を奪われてどぎまぎする。見ていないフリをしつつも吸い寄せられるようにチラチラと見てしまう自分に心のなかで舌打ちして表情を取り繕った。
「いい加減着替え持ってこいよ……君の着替え置いておくスペースくらい用意してやる」
「えー……めんどくさいから、これでいいかな」
「めんどくさいって、お前な」
「好きでしょ? こういうの」
ニヤリと笑った紫穂ちゃんがTシャツの裾を摘まんでペラリと太ももを顕にする。ギリギリまで持ち上げられたそれに思わずごくりと喉を鳴らして、いかんいかんと顔を背けた。
「……俺も風呂入ってくる」
「うん。ベッドで待ってるね?」
自分のペットボトルを持ってヒラヒラと手を振った紫穂ちゃんを見送る。
よろよろとその場にしゃがみこんで、ハァァ、と深い溜め息を吐いた。
彼氏じゃないけど俺の服を躊躇なく着る彼シャツ状態の紫穂ちゃんは、何回見たって免疫が付いてくれそうになかった。
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