とっておきのプレゼント(おねショタ編) - 2/2

 今年の誕生日プレゼントは一味違うよ! と薫ちゃんは私の背中を押しながら言った。私たちの待機室の中央に置かれた大きな箱。それを取り囲むように私たちは立っている。その箱の異様さに眉を寄せながらバースデーソングを歌って貰ったのはついさっき。サァ早く開けてみて! という期待の目が三人分、私に注がれている。

「絶対開けなきゃいけないのかしら」

 できればこのまま返品したい旨を伝えると、笑顔で皆に拒否されて。透視も駄目だよという念の押されよう。
 はぁ、と溜め息を吐いてから、嫌な予感しかしない大きな段ボールの箱に手を掛ける。封のされていない開きに指を掛けて恐る恐る中を覗いてみると、薄く射し込む光の中にすやすやと眠っている子どもの姿が見えて、思わずバッと蓋をした。

「どう? 気に入ってくれた?」

 ワクワクという音が聞こえてきそうな笑顔で薫ちゃんは問いかけてくる。それを引き攣った顔で見返しながら、箱を見下ろした。

「これって」
「ここまで運んでくんのホンマ大変やってんから! 中身が中身やからテレポート使えへんくて薫と悠理ちゃんのサイコキネシスでそろそろここまで持ってきたん」

 やれやれ、といった様子の葵ちゃんの声を聞きながら、そろりと箱を指先で撫でる。

「え、ちょっと待って。中身についてもっと詳しく聞きたいんだけど」
「効果は大体三時間です。高超度エスパーでらっしゃるので、それくらいが限界かと思います」
「え?! 効果ってなに?! 高超度エスパーってどういうこと?!」

 思わず叫ぶと三人がきょとんとした顔を見せてから、にこりと笑った。

「今年の誕生日プレゼントは、推定年齢五歳の賢木先生だよ!」

 まるでドッキリが成功したとでもいうような嬉しそうな顔をして、薫ちゃんは言った。

「え、ウソ」

 慌ててもう一度箱を開けると、確かに何だか面影を感じる子どもが未だすやすやと毛布に包まれて眠っている。

「え、ちょっと、コレ、どうしたの」
「ご本人の協力を得て、私が催眠を掛けました。明確な年齢設定が難しかったので、推定年齢五歳にはなるんですけど……」

 ちょっと申し訳なさそうな表情をして言う悠理ちゃんの顔を凝視してから、箱の中の男の子に視線を移す。

「本人、なのね……」

 溜め息を吐くように告げると、悠理ちゃんが表情を明るくして答えた。

「大丈夫です! ちょっと強めに催眠掛けましたけど、必ず効果は切れるので元に戻ります!」
「……それが、三時間後くらいなのね?」
「はい。ただ、ちょっと目が覚めた時の予測が私にもつかなくて……」
「どういうこと?」
「記憶が一体どういう状態か、ちょっと目が覚めてみないとわからないんです」

 さっきから『ちょっと』が多くない? と胡乱げな視線を投げ付けると、まるで不味いことを誤魔化すように苦笑いをしながら悠理ちゃんが視線を逸らした。

「じゃ、そういうことだから! 紫穂、あとはヨロシクね!」

 バッと逃げるように手を翻した薫ちゃんはそそくさと待機室から出ていこうとする。それを悠理ちゃんが追いかけて、まぁ楽しんでなー、と葵ちゃんが更にその後を追いかけて部屋から出ていってしまった。

「……よろしく、って言われても」

 箱の中に視線を戻すと、すよすよと気持ち良さそうに先生(五歳くらい)は眠っていて。よく知った先生の髪よりもふわふわと柔らかそうなピョコピョコ跳ねる髪に触れて、そろりと頬を撫でる。いつも感じているしっかりした肌質とは違う柔らかな感触にドキリとして手を引いた。

「……ぅん……」

 ゴソ、と箱の中で先生(五歳くらい)が動いて、丸くて大きな目がゆっくりと開いた。

「ん……母ちゃん……」

 くしくしと目を擦りながら先生(五歳くらい)がのそりと身体を起こす。まだ眠そうな目で周りをきょろきょろと見回しながら、本格的に目を覚ましたようだった。

「……ここ……どこぉ?」

 目覚めたての舌っ足らずな声は知っている声よりも高くて可愛らしい。きゅんと高鳴る胸を抑えながら、恐る恐る先生(五歳くらい)に声を掛けた。

「私のこと、わかる?」

 先生と同じ色をした目がじっと私を見つめて首を振った。

「……わかんない」

 不安そうに揺れる瞳に微笑みかけて、咄嗟に嘘を吐いて誤魔化した。

「お母さんは用事でお出かけしてるから、私と一緒にお留守番してよっか」
「うん」

 素直に頷いてくれたことに安心して、はてさて一体どうしたものかと思考を巡らせていると、先生(五歳くらい)が箱から出ようと立ち上がった。毛布に包まれていた身体が現れて、本当に子どもになっちゃったんだな、と改めて感じる。箱から自力で出るのは難しそうな状態で、先生(五歳くらい)の脇に手を入れてよいしょと抱き上げた。

(うわ、重ーい)

 身体から伸びる手足はすらりと細いのに、がっしりとした重さに男の子を感じつつ、何とか箱から持ち上げて出してあげる。ついでに触れたところからこっそり先生(五歳くらい)の情報を透視み取ると、どうやらやっぱり先生本人に間違いないようで。黒のタンクトップにベージュのズボン、それにパーカーを羽織っているスタイルはいつもの先生と変わらないのに、不安そうにこちらを見てくるのが慣れなくて、何だか不思議な感覚だった。

「……お名前、何て呼べばいいかな?」

 しゃがんで先生(五歳くらい)の視線に合わせて微笑みかけると、ぎゅっと服の裾を掴んで先生(五歳くらい)は少しだけ怯えたように答えた。

「……知らないひとに、名前おしえちゃダメだって、母ちゃんにいわれてるから」

 申し訳なさそうに呟いた先生(五歳くらい)は幼さも相まって、その可愛らしさにキュンとしてしまった。一瞬だけ天を仰いでから、向き直って安心させるようににこやかに笑う。

「私の名前は三宮紫穂だよ。君のお母さんはここで用事があるから、その間、君と一緒にいるように頼まれたの。だからお名前教えてくれる?」

 我ながらスルスルと嘘が口から出てくるなと思う。それでもこの場を乗り切る為には仕方がない。だってこんな調子で三時間も過ごすことになったらお互いツラいじゃない。自分に言い訳をしながらまだ疑いの目を向けてくる先生(五歳くらい)に、そういえば、と閃いて棚から自分用のお菓子を取り出した。

「お菓子あるよ? 食べる?」

 お気に入りのチョコ菓子をカサカサと振って見せると、途端に目が輝き始めた先生(五歳くらい)がごくりと喉を鳴らした。

「でも、母ちゃんが、おやつは決まったじかんに食べなさいって」
「バレなきゃ大丈夫よ」

 シー、と口の前で指を立ててお菓子の箱を差し出すと私と箱をキラキラした目で見比べてからおずおずと箱に手を伸ばした。先生(五歳くらい)はまだお菓子に手を付けるのを躊躇っているようで、顔中にいいのかな? という疑問符を浮かべている。それを後押しするように、大丈夫、ともう一度微笑めば、誘惑には勝てなかったのか、早速チョコ菓子を取り出してぽりぽりと食べ始めた。

(チョローい……っていうか、何だか子どもを連れ去る悪い大人の気分……)

 先生(五歳くらい)の愛らしさもあって、どうも変な気分になってくるのを誤魔化しながら、改めて問いかけてみた。

「ねぇ、そろそろお名前、教えてくれる?」

 もぐもぐとお菓子を咀嚼しながらチラリとこちらを見た先生(五歳くらい)は、ニコリと笑って言った。

「さかきしゅーじ! 5さいだよ!」

 口の周りにチョコを付けて、ビッと小さな手のひらを広げて五の数字を示した先生(五歳くらい)は、先程までとは違う心の開いた笑顔を見せてくれている。心の中で何か疼くものを感じながら、微笑んで首を傾げた。

「じゃあ……しゅーじくん、でいいのかな?」
「うん! おともだちもみんなそう呼んでるよ!」

 しゅーじくんの満面の笑みに、とす、と胸に矢が刺さった。

(チョロ……ううん、可愛い! すっごく可愛いんだけど!!!)

 大人になってからの先生しか知らないし、子どもの頃の話なんて聞いたこともなかったから、こんなにも可愛いだなんて思ってなかった。元気さを表現するような軽やかな癖毛に、くりくりした鷲色の目。いつしか、先生が自分は美少年だったと言っていたけれど、それに嘘偽りはなかったようで、しゅーじくんは間違いなく美少年の部類だった。じーっとしゅーじくんのことを見つめていると、しゅーじくんはきょとんと首を傾げてから、ハッと閃いたように目を瞬かせてお菓子の箱を私に向かって差し出してきた。

「おねぇちゃんも、食べる?」

 無邪気な笑顔で差し出されたチョコ菓子としゅーじくんの周りが、キラキラと輝いて見える。

(やっばい……ちょっと、可愛すぎない!?)

 あまりの破壊力に思わず口元を押さえながら、じゃあ一本だけ貰おうかな? とお菓子に手を伸ばした。頬が赤いのを俯いて誤魔化しながらお菓子を口に咥えると、何だかいつもより甘い気がして。

「……いっしょに食べると、おいしいね?」

 可愛い顔でにこ、と微笑まれて、心臓が爆発するかと思った。

(……これは想像以上のプレゼントだわ)

 心の中で皆ありがとう、と呟いて、見た目は子どもだけど中身は大人なんだからいいよね、とどこかの推理マンガみたいな言い訳をして、新たに開花してしまった欲求を満たすべく、しゅーじくんに声を掛けた。

「……ねぇ、しゅーじくん。お母さんが帰ってくるまで、お姉さんとお話しない?」

 とにかくこの可愛い生き物を堪能したい。その一心で私は突き動かされていた。

「……? いいよ?」
「じゃああっちのソファに行こっか」
「うんっ!」

 眩しすぎる笑顔を受け止めながらしゅーじくんをソファの方へ促すと、自然と手を伸ばされてきゅっと指先を握られた。小さな手の柔らかな感触に、ハートを鷲掴みにされてぐっと唇を噛み締めた。可愛い。凶悪すぎる。私、本当に犯罪犯しちゃうかもしれない。でもいいよね、中身は先生本人なんだもん。合法ショタよ、これは。顔に笑顔を貼り付けて自分に言い聞かせる。握られた手をきゅっと握り返して、一緒にソファに座る。手を繋いだまま隣に座ったしゅーじくんの手のひらからは私に対する信頼しか伝わってこなくて。ほんの少し頭をもたげ始めた背徳感を無視して口を開いた。

「しゅーじくん、よかったらお姉さんのお膝に座らない?」
「……いいの?」
「いいわよ?私のお膝でよかったら」

 おいで、と両手を広げると、しゅーじくんは嬉しそうに私に背中を預けて膝に腰掛けてきた。私はそれを受け止めるように腰に手を回して後ろからしゅーじくんを緩く抱き締める。大丈夫、これは先生よ。しゅーじくんだけど本当は賢木修二(大人)なの! 精一杯自分の中で蠢く欲求を抑えつけていると、腕の中でこちらに振り返ったしゅーじくんが眉毛を下げながら笑った。

「あのね、ぼく、知らないところでこわかったから、しほちゃんがいてくれてうれしい」

 へにゃりとしたしゅーじくんの笑顔を向けられて、耐え切れずにぎゅうっとしゅーじくんを抱き締めた。

「そうよね! いきなりこんな知らないところに連れてこられて怖かったよね! ごめんね!」

 ぎゅうぎゅうと小さな身体を抱き締めながらうりうりとしゅーじくんに頬ずりをする。先生相手じゃできないけれど、しゅーじくん相手なら問題ない。くすぐったいよ、と腕の中で恥ずかしそうに呟くしゅーじくんに、更に何かが爆発した。スッとしゅーじくんの脇に手を差し入れこちらに向けて座り直させる。しゅーじくんが私の膝を跨ぐような体制になったところをもう一度ぎゅっと抱き締めた。

「しほちゃん、ぼく、恥ずかしいよ……」
「大丈夫。大丈夫よ……」

 自分でも何が大丈夫なんだと思いながら、安心させるようにしゅーじくんの背中を撫でる。力の入っていたしゅーじくんの身体から次第に力が抜けてきて、ぎゅっと背中に手を回された。その頼りない仕草が普段の先生とギャップがありすぎて、また私の中の何かが爆発した。そっと身体を離してしゅーじくんの顔を覗き込むと、頬を赤く染めて上目遣いに私を見返してきて。それがあまりにも可愛すぎて頭が爆発するかと思った。何もかもを爆発させた私は誘われるようにしゅーじくんの頬に右手を添わせた。そこからふわりと伝わってきたのは羞恥心。大人の先生だったら殆ど感じることのできない感情に、自分の中のイケナイ何かがめらりと燃え上がった。

「しゅーじくん、恥ずかしいのね?」
「うん。ぼく、なんだか恥ずかしい」

 きゅっと目を瞑るしゅーじくんに、そっと顔を近づけて耳元に囁く。

「どうして? 何も恥ずかしいことなんてないわ」
「でも……しほちゃんが近くて、ドキドキするんだ」
「あら? どうして? 近いとイヤ?」
「だって、しほちゃん、かわいいから。ドキドキしちゃうんだ」

 顔を赤くして呟いたしゅーじくんに、思わず天井を仰ぎ見た。

(天使……天使がいる)

 ふるふると身体を細かく震わせながらぎゅっと目を閉じているしゅーじくんは可愛い以上に愛らしくて。長くてカールした睫毛の先まで小さく震えていた。怯えさせないように優しく頬を撫でて、そのままチュッと頬にキスを落とすと、カッと目を開けたしゅーじくんが震えながら頬を両手で押さえた。

「い、いま、チュウしたでしょ!」

 わなわなと口を震わせているしゅーじくんに笑顔で頷くと、困ったように眉を下げてしゅーじくんは叫んだ。

「どうしよう!」
「どうしたの?」
「おんなのことチュウしたら、けっこんしなきゃダメなんだよ!?」

 母ちゃんが言ってた! としゅーじくんは困り果てたように眉をハの字にして私に言った。私はふーん、と思いながら余裕で笑みを返す。

「そうなの」
「なんでそんな平気なの! ぼくとけっこんしなきゃいけないんだよ!」

 必死に言い募ってくるしゅーじくんが何だかおかしいけれど可愛くて、もっと虐めたくなってしまう。

「私、しゅーじくんと結婚しても、何も困ることなんてないわ」

 実際、付き合ってるし、将来そうなるといいなー、なんて考えていないわけじゃない。本心からの言葉をしゅーじくんにぶつけると、しゅーじくんは更に顔を真っ赤にして叫んだ。

「けっこんってなにか知ってるの! けっこんしたらずーっといっしょにいなきゃいけないんだよ!」
「……そうね。結婚ってずっと一緒にいましょうね、って約束だもの」
「ずーっとずーっといっしょなんだよ! おふとんで寝るときもいっしょなの! しほちゃんはいやじゃないの!?」

 興奮しすぎたのかじわりと目尻に涙を溜めてしゅーじくんは叫んでいる。そんな姿も愛らしくて、両手を優しく掴んであげる。

「嫌じゃないわ? しゅーじくんは私と結婚するの、嫌なの?」

 首を傾げて妖艶に微笑めば、しゅーじくんはボンと湯気が出そうなほどに顔を赤くして俯いてしまった。ぎゅうっと手を握り返されて、応えるように手に力を込めると、ぽつり、としゅーじくんが呟いた。

「……いや、じゃないよ。しほちゃん、かわいいもん」

 きっとはなよめさんっていうのになっても、すごくかわいい、としゅーじくんは呟く。この頃からタラシは健在か、と思いながら、もじもじしているしゅーじくんを見ているとやっぱり自分の中のイケナイ何かを刺激されてしまって。

「じゃあ、しゅーじくんも私のほっぺにキスしてくれる?」

 しゅーじくんに向かって頬を差し出すと、しゅーじくんはぎゅっと目を瞑ってチュッと可愛い音を立てて私の頬にキスをした。

「……これで、ずーっと一緒だね?」

 ふふ、と微笑むと、しゅーじくんは恥ずかしそうに目を泳がせながら、一生懸命な様子で口を開いた。

「ぼく、しほちゃんのこと、たいせつにするね。ぼくのおよめさんになるんだから、しほちゃんはうわきしないでね。ずっとずっと僕といっしょにいてね」

 約束だよ、としゅーじくんは私に言った。そんなしゅーじくんが可愛くて、そっと前髪を掻き分けて丸いおでこにキスを落とした。

「ずっとずっと一緒にいるわ。貴方が大人になって、他の女の人に浮気してる間も、ずっと側にいてあげる。約束よ」
「ぼ、ぼく、うわきしないよ! うわきはいけないことなんだよ! ぜったいしちゃダメなんだよ!」

 一生懸命言葉を紡ぐしゅーじくんが可愛くて、そして、それを先生が言っちゃうんだ、という呆れも混じって、くすくすと笑みが溢れる。プンプンと怒っていたと思ったら、しゅーじくんは急にスイッチが切れたようにウトウトし始めて、目を擦り始めた。

「大丈夫? 眠くなってきた?」
「……うん。ねむい」

 うー、と小さく唸り声を上げたしゅーじくんを抱き上げて、そっと横抱きにする。そのまま優しく膝枕の状態にしてあげる。

「このまま寝てもいいよ」
「んー……でも……」
「寝るまでちゃんと見ててあげるから」

 トントンと身体を撫でるように叩いてあげると、ぎゅっと手を掴まれた。

「ずっとずっと一緒だよ。しほちゃんはぼくの、およめさんなんだからね」

 眠気に抗うように呟いて、しゅーじくんはそのままスーッと眠ってしまった。そのままふわふわのくせっ毛を惜しむように指で梳いて、時計に目を遣ると悠理ちゃんが言った通り、きっかり三時間が過ぎたところだった。視線をしゅーじくんへと戻すと、そこにはもう大人に戻った先生が横たわっていて。あまりの違和感の無さに、流石悠理ちゃん、と心の中で呟いた。うーん、と眉間に皺を寄せた先生が、ふ、と目を開いてガバリと身体を起こした。

「何すんだ悠理ちゃんッ!……って、アレ? 紫穂?」
「寝起きにいきなり他の女の名前を口にするなんていい度胸ね、センセ?」
「えっ?! いや! これはそのッ! っていうか何で紫穂がいんの?! つーかマジで俺どうしてここにいんの?」

 顔中にはてなマークを浮かべて慌てた様子の先生にクスリと笑って頬に手を伸ばす。よく知った感触のそれを引き寄せて、そっとキスを落とした。

「ずっとずっと一緒だよ、しゅーじくん」
「え?」
「何でもないわ」

 今日のことは、私だけの秘密。先生のことだから、事実を知ったら全部透視せろって煩いんだろうけど。まだ首を傾げている先生に抱きついて、先生の中にいるしゅーじくんに心の中で語りかける。

(ちゃんと、一緒にいるからね)

 不思議そうな顔をして私を見る先生をぎゅっと抱き締めて、大好きだよ、と囁いた。

1

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください