「ハイ。これ、あげる」
「……ありがと?」
急に、何の前触れもなく、突然渡されたプレゼント。戸惑いながらも紫穂から受け取ったソレは、適度に重く、でもズッシリとまではいかない、俺の片手で持つにはちょうどいいくらいのサイズ感の箱だった。
「開けてみても?」
「……ここで開けるのはやめておいた方がいいと思うわ」
家に持って帰ってからがいいかな? と急に少し目を泳がせた紫穂に疑問を抱きながらも、素直に紫穂の提案に従って、持っていた鞄に紫穂からのプレゼントを仕舞った。
「……ね? 今日……電話、できる?」
スッ、と俺の白衣を掴んで目を逸らしながら聞いてくる紫穂は今日も可愛い。
「もちろん」
廊下に誰もいないのを良いことに、紫穂の頬にキスを落とす。
「今日、俺、早番だから。もう上がるとこだよ」
二人だけの秘密の会話も、もうだいぶ馴染んできた。
紫穂と夜の約束をひそひそと交わして指を絡め合う。繋いだ手から会話すれば誰にも聞かれることなくいくらでも内緒の話ができるのに、敢えてそれをせず背の低い紫穂に顔を近付けて肉声を交わす。身体を屈めて低い声を紫穂の耳許に吹き込めば、擽ったそうにクスクス笑う可愛い紫穂が間近で見られて堪らない。本当は抱き締めて腕の中に閉じ込めてしまいたいけれど、辛うじてここが職場であると理性が俺にブレーキを掛けていて、ゆるりと紫穂の腰を抱き寄せるに留めた。上から覗くと見える紫穂の可愛いつむじに軽く口付けてそっと紫穂を解放する。
「紫穂の準備が整ったら連絡くれ。待ってる」
でもやっぱり離れがたくて紫穂の手を取って指先に口付けると、ぷいと紫穂はそっぽを向いてしまった。
「ん……ちょっといちゃつきすぎよ。じゃあまた後でね」
「わりぃ。じゃあまた後でな」
眉を下げて手を振ると、紫穂もはにかみながら手を振って、俺に背中を向けて歩いていく。怒っているようで実は照れ隠しなのだとわかっている今はもうただただ紫穂が可愛くて仕方がない。あーホント俺の彼女かわいいなぁ、とウキウキした足取りで家路を急いだ。
17歳の保健体育 - 3/3
0
コメントを残す