「……部長、公私混同はどうかと思います」
医療研究棟で俺の秘書代わりを務めてくれている職員が、呆れた声を上げながら俺のデスクに書類を積んだ。
「……アレ……バレちゃった?」
「バレるも何も……バレてないと思ってる辺りが甘いんです。我々を舐めないでいただきたい」
俺のデスクから決裁済みの書類を引き取ったそいつは、肩を竦めて言った。
「いやぁ、だからさ。こうしてめちゃめちゃ頑張ってんじゃん? 無理言ってんのは承知の上」
手に持っていたペンをクルリと指先で回して書類を確認している部下に苦笑いを零す。
「わかってますよ。だからこうして誰も何も言わずに対応しているんでしょう」
「……よくできた部下に囲まれて有り難いと思ってます」
「煽てても何も出ませんよ。とっととそれ済ませて、ねじ込んだ本部での時間、有効に使ってきてください」
「りょーかい。あと、頼むな」
ニ、と口角を上げると、誰に向かって言ってんですか、と部下は書類の束を抱えて部屋から出て行った。本当に、バベルには頼もしい職員が山ほどいて恵まれてんな、と感心しながら、残りの事務作業に取り掛かった。
これさえ終わらせれば今日の残りの時間と明日丸一日は本部にある検査課の定期視察という名目でバベル本部にいられる。
自分でも昨日の今日で相当なゴリ押しだとは思うけれど、形振り構っちゃいられない。メッセージを既読にすらしてくれない今の状態じゃ、直接接触するしか紫穂ちゃんの本当の意思を確認する術は無かった。
「もう手遅れ……なんて言わないでくれよ、頼むから」
誰に聞かれるわけでもない独り言を呟きながら、必死に山になっている書類と格闘した。
星屑キラリ - 12/14
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