「あいつおれのことすきなのか」
ぽそりと呟かれたソレが聞こえて思わずバッと声の主を見上げた。
「ハ? 何言ってんスか」
そう返してしまった俺に非があるとは思えない。
「いじらしいところがあるじゃねぇか。今俺を見て微笑んだ」
それってつまりそういうことだろ? と不敵に笑うレオナさんを見上げたまま、あんぐり開いた口はしばらく閉じてくれそうになかった。
いやいやそういうことってどういうこと?
そう聞き返してしまえばいいもののニヤニヤと珍しく喜びを隠せないように笑うレオナさんが不憫で、俺は何も言えなかった。
「男だらけのこの学校のなかで俺を選ぶなんざ、いい目を持ってやがる」
なァ? ラギー?
そう言って腕を組んだレオナさんは相変わらず口元が緩んだままじっとユウくんを見つめていた。
待って。コレって突っ込んだ方がいいの?
俺のツッコミ待ちなの?
いやいや流石の俺にも荷が重すぎるっスよ?
だってたまたま目が合って笑い返してくれただけで、ユウくんがレオナさんのことを好きだと思い込むって……嘘でしょ?
そもそもこんなごった返した合同授業で目が合うってことはアンタの方が先にユウくんのことを見つめてたって気付いてる?
あんなに熱烈に見つめられて笑顔で返してくれるなんてユウくんは心が広すぎるんスよ!
「オイ。放課後アイツをサバナクローまで連れて来い。丁重に持て成してやらねぇとなァ」
うえぇっ! と返事をする前に教室から出て行ったレオナさんの後ろ姿は今にも鼻歌が聞こえてきそうなくらい幸せそうで。
恋ってどんなに賢い人ですら、どこまでもバカにしてしまうんだなぁ、と溜め息を吐くしかなかった。
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