検査終わり、先生に誘われてバベルの自販機コーナーへ向かう。薫ちゃんと葵ちゃんには気を遣われてしまって、二人きり。こんなことはもう何度目だろう。先生は今日あった出来事を事細かに教えてくれて、私はただそれを聞いてるだけ。それだけでもとても大切な時間で、私には充分だった。先生にこれ以上なんて求めちゃいけない。子どもの私が、先生の周りを取り巻く華やかな女性たちに勝てるわけがない。でも、この時間、この時だけは、私だけの先生だ。いつものミルクティを受け取って、先生と二人、据え置きのソファに並んで座る。時折、先生の話に相槌を打ったり、笑ったり、つっこんだり。短いけれど貴重な時間。カップの中の飲み物が、この時の終わりを知らせてくれる。これ以上、側に居たいなんて望んじゃいけないってわかってるのに。最後の一口を飲むのにすごく時間が掛かってしまう。ふと先生が黙りこんでしまって、どうしたのかと先生を見つめると先生はふっと笑ってカップをごみ箱へと投げた。ああ、今日の時間が終わってしまうとツキリとした痛みに耐えていたら、そっと優しく肩を抱かれた。突然の出来事に身を固めていると、耳許で好きだよと囁かれた。先生の真剣な声が、全身を駆け巡る。ティータイムだけの逢瀬はもうやめだ、と言われて、先生も同じ気持ちだったんだと嬉しくて涙が溢れた。
5
コメントを残す