2021年16号と17号の幕間

「私また守れなかった」

小さくそう呟いた紫穂の頭をそっと抱き寄せる。

「……あれは誰にも予想できない展開だった。俺も、紫穂も、見抜けなかったし、兵部ですら、その可能性に気付いたのはギリギリの段階だったんだ。アイツの、ギリアムの計画を止められなかったのは、誰のせいでもないんだ」
「でも、私……また、また薫ちゃんを、薫ちゃんのこと、守れなかった」

俺の肩に額を押し付けながら、ぎゅう、と紫穂の細い指が俺の服に皺を作る。
透視まなくてもわかる、その悲痛な心の痛みが俺にも伝わって、自分たちの無力感に胸が締め付けられた。
俺たちは透視めなきゃ防げないし、透視めたって自分だけではどうにもできない無力な存在だ。それでも大事な人を守りたいと心に決めて運命に立ち向かう。自分じゃ到底力不足で、人の力を借りなきゃ物理法則を超えるエスパーたちの中では到底やっていけない。
俺たちは、ただ、人よりよくみえるだけでしかない。
悔しさに涙を零してしまえばいいのに、腕のなかにいるこの子はそれを是としない。いつもみたいに甘えて罵ってくれれば、俺だって甘やかして慰めてやれるのに。
こういうときにだけ、誰よりも強くあろうと。誰よりも孤独に戦おうと、俺に背を向けて行ってしまう。

「……薫ちゃんのコトは任せろ。皆本と俺がついてるんだ。下手に暴走なんてさせない」

君とアイツの大事なコなんだ、何が何でも俺が何とかしてみせる。

「……お願い。薫ちゃんのコト、お願いね。先生」

そっと顔を上げて俺を見つめる視線に、ふわりと笑って頷いた。

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