喧嘩してゴメンね? - 2/2

どうにかこうにか、何とか手術を終えて、帰路につく。
こんな難しい手術はどうかご予約の上で執刀させてほしい。
まぁそんなうまくいけば、緊急手術なんてもんが存在しなくなるわけで。
そんなことは有り得ないとわかっているから、仕方ないと現状を受け入れるしかない。
バイクに跨がって、ドルンッ、とエンジンを掛ける。
紫穂、怒ってんだろうなぁ…
どうご機嫌を取ろうかと悩んでいるうちに、あっという間に家のマンションまで辿り着く。
取り敢えず、家に着いたら電話してみるか。
オートロックを解除して玄関の定位置にメットを置くと、紫穂の靴があることに気付いて。
慌てて靴を脱いでバタバタとリビングに駆け込むと、そこには誰もいない代わりにテーブルの上にプリンがひとつ。
プリンの側に何か置いてあるのが見えて近寄ると、紫穂の字で書かれた『ごめんなさい。』のメモ書き。
メモのサイズに比べてとても小さく書かれたそれは、紫穂の心情を表しているようで。
透視まなくても、感情が伝わってくるみたいだ。
なんかもう可愛くて堪らなくなって、全てのことがどうでもよくなって。
家の何処かにいるはずの紫穂を探す。
そろりそろりと足音を忍ばせながらそれぞれの扉を開けていく。
隠れるならここだろ、と俺のクローゼットを開けてみても、見つからない。
最後に残ったのは俺の寝室。
まさか、とは思いながら、できる限り音を立てないようにドアを開けてこっそりと部屋の中を覗き込むと。
俺のベッドにこんもりと山ができていて。
そーっと近付いて布団を捲ると、朝脱ぎ散らかしたままにしていたパジャマと俺の枕を掻き寄せるように抱き締めながら、身体を丸くして眠る紫穂。
それを見たら、何かもう本当にこの可愛らしい生き物に完敗してしまった。
とっととラフな格好に着替えて、紫穂の隣に潜り込む。
そっと後ろから包み込むように紫穂を抱き締めて、俺も目を閉じる。
最悪だったけど、最終的にはお釣りが出るくらいに最高な誕生日になったんじゃねぇか?
少しだけ眠ったら、紫穂と一緒にプリンを食べて、残った時間で何処かに出掛けてもいいな。
打って変わって楽しい気分に浸りながら、紫穂の髪に顔を埋めて眠りに落ちた。

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