=エピローグ=
実を言うと、最期の引き金は自分で引いた。
皆本の甘美な言葉に誘惑されたってだけじゃない。
俺自身、引き金を引いて紫穂の息の根を止めるこの瞬間を、誰にも邪魔されず、自分だけのモノにしたいと思ったからだ。
――お前もそうだったんだろ?皆本。
自分も同じ立場になって、やっとわかったよ。
所詮、俺はお前のこと、想像でしかわかってやれてなかった。お前の感じた、何もかもを、やっと今共有できた気がするぜ。
――これで、お前と俺は同じ道を歩めるだろ?
猫に戻った紫穂の身体をぎゅっと抱き締める。
小さな身体からはどくどくと血が溢れて、命が失われていくのがわかる。
冷たくなっていく身体を抱き締めて、お前も俺と同じ想いを抱えてたんだろうか?
服が血で汚れることも気にせずに、力ない身体をいつもしてやっていたように大切に腕に抱き抱える。
「賢木、死体の始末をしょうか」
「…ああ、そうだな」
皆本に声を掛けられて、ゆっくりと振り返る。
皆本とドロシーに向かって、淡々と笑って歩みを進めた。俺はもう、きっと、彼女の元には戻れない。
――ごめんな、紫穂。
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